壮大なピラミッドや歴史的な遺跡が魅力のエジプト。しかし、イスラム教が主要な宗教であることから、「旅行中にお酒は楽しめるのだろうか?」と疑問や不安を抱く方も少なくありません。食事と共に一杯を楽しみたい、ホテルでリラックスしたいと考える旅行者にとって、現地の飲酒事情は非常に重要な情報です。この記事では、エジプト国内でのお酒の基本的なルールから、具体的な購入場所、レストランでの提供状況、さらには日本からのお酒の持ち込みに関する規定まで、あらゆる疑問に答えます。この記事を読めば、エジプトの酒事情に関する不安は解消され、ルールを守ってスマートにエジプト旅行を楽しむことができるようになります。
この記事を読むことでわかること
- イスラム教国エジプトにおける飲酒の基本ルールと文化的背景
- 国産ビールやワインの種類と特徴、具体的な購入方法
- レストランやバーでスマートにお酒を楽しむための実践的知識
- お酒の持ち込み・持ち出しに関する詳細な規定と注意点

エジプトの飲酒文化と基本ルール
エジプト旅行を計画する上で、まず理解しておくべきは、宗教と法律が飲酒にどう関わっているかです。イスラム教の教えと、観光立国としての現実が共存するエジプトならではの飲酒ルールを解説します。
イスラム教国における飲酒の位置づけ
エジプトは国民の大多数がイスラム教徒であり、イスラム法では飲酒は禁じられています。このため、日常生活においてお酒が公然と飲まれる文化は一般的ではありません。しかし、一方でエジプトにはキリスト教の一派であるコプト教徒も国民の約1割を占めており、彼らの間では飲酒が許容されています。また、古代エジプトではビールやワインが広く飲まれていた歴史もあります。このような背景と、外国人観光客を重要な産業とする国家としての側面から、法律上は非イスラム教徒や外国人観光客の飲酒が認められており、特定の場所での販売・提供が許可されています。
旅行者が飲酒可能な場所と禁止されている場所
旅行者がエジプトでお酒を楽しむ場合、場所を選ぶことが極めて重要です。飲酒が許可されているのは、主に外国人向けのホテル内のバーやレストラン、アルコール提供のライセンスを持つ一部のレストラン、そして個人の住居やホテルの自室など、プライベートな空間です。一方で、路上や公園、公共交通機関の中など、公共の場での飲酒は法律で固く禁止されています。違反した場合は罰則の対象となる可能性もあるため、絶対に避ける必要があります。購入したお酒は、必ずホテルに持ち帰ってから飲むというルールを徹底することが大切です。
ラマダン期間中の特別な注意点
イスラム教徒が日の出から日没まで断食を行う「ラマダン」の期間中は、飲酒に関する制約が通常期よりも厳しくなります。この時期、多くのレストランではアルコールの提供が終日停止されます。外国人向けの高級ホテル内では提供が続けられることが多いですが、提供時間が短縮されたり、場所が限定されたりすることがあります。また、町中にある酒店も営業時間を短縮、あるいは休業することがあります。ラマダン期間中にエジプトを訪れる際は、普段以上にお酒の入手や飲酒場所が限られることを念頭に置いて計画を立てる必要があります。
飲酒に関するその他の法律とマナー
公共の場での飲酒禁止に加え、旅行者が心得るべきマナーがあります。それは、イスラム教徒への配慮です。彼らの前で飲酒を見せびらかしたり、飲酒を勧めたりする行為は絶対に避けるべきです。また、泥酔して騒ぐ行為は、文化や宗教に関わらず非常に無礼と見なされます。特にエジプトでは、社会の秩序を乱す行為に対して厳しい目が向けられるため、節度を持った飲酒を心がけることが、安全で快適な旅行の鍵となります。
エジプトでお酒を入手する具体的な方法
エジプトでは、どこでも簡単にお酒が手に入るわけではありません。ここでは、旅行者がお酒を購入できる具体的な場所と、それぞれの特徴について詳しく解説します。
専門酒店「Drinkies」の完全ガイド
エジプト国内で最も確実にお酒を購入できるのが、「Drinkies(ドリンクリンクス)」という名前の酒類専門チェーン店です。カイロやルクソール、アスワン、紅海リゾートなど、主要な都市や観光地には複数の店舗が存在します。店内には、エジプト国産のビールやワインをはじめ、輸入物のウイスキーやスピリッツなどが並びます。営業時間は店舗によりますが、おおむね昼前から夜10時頃までです。支払いは現金(エジプトポンド)が基本ですが、大きな店舗ではクレジットカードが使える場合もあります。価格帯は国産ビール500ml缶で30〜40エジプトポンド程度が目安です。
国産ビール「ステラ」と「サッカラ」を徹底比較
エジプトの二大国産ビールブランドが「ステラ(Stella)」と「サッカラ(Sakara)」です。ステラは1897年創業という長い歴史を持つ、エジプトで最も愛されているビールです。アルコール度数4.5%のすっきりとした味わいで、どんな食事にも合わせやすいのが特徴です。一方のサッカラは比較的新しいブランドで、若者を中心に人気があります。アルコール度数4%の「サッカラ・ゴールド」や、5%の「サッカラ・キング」など、複数のラインナップがあります。どちらも暑い気候の中で喉を潤すのに最適な軽快なラガービールで、エジプトを訪れた際にはぜひ試したい一杯です。
隠れた名産?エジプトワインの世界
あまり知られていませんが、エジプトは古代から続くワイン造りの歴史を持ち、現在も国内でワインが生産されています。主要なブドウ産地はナイルデルタ地帯やルクソール近郊にあります。代表的なブランドには「オベリスク(Obelisk)」や「シャトー・ド・レーム(Chateau de Reves)」などがあり、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった国際品種からワインが造られています。味わいは、日照時間が長い気候を反映した、果実味が豊かで力強いスタイルが中心です。高級ホテルのレストランや専門酒店で取り扱いがあり、価格は一本200エジプトポンド前後からとなっています。
空港免税店の賢い利用法と注意点
カイロ国際空港などの免税店は、特に輸入物の洋酒を求める場合に便利な選択肢です。大きな特徴は、到着時の入国審査後にも店舗がある点です。ここで購入すれば、市中で酒店を探す手間が省けます。ただし、到着時の免税店での購入は、入国後48時間以内かつパスポート1人あたり一定額までといった制限があるため注意が必要です。一般的なスーパーマーケットや個人商店ではアルコールは一切販売されていないため、このルールは旅行者にとって非常に重要です。
レストラン・バーでのお酒の楽しみ方
観光の合間やディナーの際に、レストランやバーでお酒を楽しみたいと考えるのは自然なことです。ここでは、お店選びから注文までの実践的なヒントを解説します。
アルコール提供店の上手な見つけ方
すべてのレストランでアルコールが提供されているわけではありません。見分けるポイントとしては、まず外国人観光客が多く利用するエリアや、高級ホテル内にあるレストランは提供している可能性が高いです。また、店の入り口やメニューにビールのブランドロゴ(ハイネケンなど)が掲示されていれば、そこは認可店である証拠です。メニューに「Beverages」や「Soft Drinks」とは別に、「Local Beer」や「Alcoholic Beverages」といった項目があれば確実です。不明な場合は、入店時に「Do you serve alcohol?」と控えめに尋ねるのがスマートです。
注文時に知っておきたいこととチップの習慣
レストランでの国産ビールの価格は、1杯50〜80エジプトポンド程度が相場です。輸入ビールやワインはそれよりも高価になります。メニューの価格には、サービス料や税金が含まれていない場合があるため、会計時に確認が必要です。エジプトにはチップの文化が根付いており、会計にサービス料が含まれていても、気持ちの良いサービスに対しては会計の5〜10%程度のチップを現金でテーブルに残すのが一般的です。
日本からのお酒の持ち込みと持ち出し
最後に、日本とエジプト間でお酒を移動させる際のルールについて解説します。規定を正しく理解し、トラブルを避けましょう。
免税範囲の詳細と超過した場合の手続き
日本からエジプトへ個人消費目的でお酒を持ち込む場合、旅行者1人あたり1リットルまでの酒類が免税範囲とされています。これを超える量を持ち込む場合は、税関で申告し、所定の関税を支払う必要があります。関税率は非常に高額になる可能性があるため、特別な理由がない限りは免税範囲内に収めるのが賢明です。
お土産としてエジプトのお酒を持ち帰る
エジプトの国産ビールやワインは、ユニークなお土産になり得ます。これらを日本に持ち帰る際の免税範囲は、成人1人あたり合計3本(1本760mlのもの)までです。瓶が割れないよう、衣類などで厳重に梱包し、必ずスーツケースなどの預け荷物に入れましょう。空港の免税店で購入すれば、梱包の手間が省ける場合もあります。
まとめ
最後に、この記事で解説した「エジプトの酒事情」に関する要点をまとめます。
- エジプトはイスラム教国だが、外国人観光客の飲酒は特定の場所で許可されている。
- 路上や公園など公共の場での飲酒は法律違反となり、厳禁。
- 飲酒が可能なのは、認可されたホテルやレストラン、ホテルの自室など。
- 一般的なスーパーではお酒は購入できず、専門酒店を利用する必要がある。
- 国内最大の酒類専門チェーン店は「Drinkies(ドリンクリンクス)」。
- 国産ビールの二大ブランドは「ステラ(Stella)」と「サッカラ(Sakara)」。
- エジプトには「オベリスク」などの国産ワインも存在する。
- 空港の到着エリアにある免税店は、入国後48時間以内なら利用可能。
- アルコールを提供するレストランは、外国人向け施設やエリアに多い。
- メニューに「Alcoholic Beverages」の項目があるかどうかが見分けるポイント。
- レストランでの国産ビールの価格は、1杯50〜80エジプトポンドが目安。
- 良いサービスには、会計とは別に5〜10%のチップを現金で置くのが一般的。
- ラマダン期間中は、アルコールの入手や提供が通常期より大幅に制限される。
- イスラム教徒の前で飲酒を見せびらかしたり、勧めたりする行為は避けるべき。
- 日本からエジプトへの酒類の持ち込みは、1人1リットルまでが免税範囲。
- 免税範囲を超えて持ち込む場合は、高額な関税がかかる可能性がある。
- お土産としてエジプトのお酒を日本に持ち帰る際の免税範囲は3本まで。
- 持ち帰る際は、瓶が割れないよう預け荷物の中で厳重に梱包する必要がある。
- 泥酔して騒ぐ行為は、文化や宗教を問わず厳しく見られるため慎むこと。
- 事前に正しい知識を持つことで、ルールとマナーを守りながら安全にお酒を楽しめる。

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