エジプト。それは、古代文明のロマンが息づく、多くの旅人を魅了してやまない国です。ギザの三大ピラミッドやスフィンクス、荘厳な神殿が並ぶルクソール、そして喧騒と活気に満ちたカイロの旧市街。しかし、この魅力的な国を訪れる多くの旅行者が共通して直面する大きな課題が、「現地の交通手段」の問題です。
特にカイロなどの大都市では、タクシー運転手との料金交渉が必須であり、相場を知らない旅行者が不当に高い金額を請求されるケースや、望んでもいないお土産屋へ立ち寄りを強要されるといったトラブルが、残念ながら頻繁に報告されています。
そんな中、エジプトの交通事情を劇的に改善し、旅行者の強力な味方となっているのが、世界最大の配車アプリ「ウーバー（Uber）」です。この記事では、エジプト旅行を計画している方、あるいは現地の移動手段に不安を感じている方に向けて、エジプト国内でのウーバーの利用実態、安全性、料金体系、具体的な使い方、さらには利用時の詳細な注意点まで、プロの視点から網羅的に徹底解説します。
この記事を読むことでわかること
- エジプトのどの都市でウーバー（Uber）が利用できるか、また利用できない主要観光地はどこか
- エジプトでウーバーを利用する具体的なメリットと、従来のタクシーとの決定的な違い
- ウーバーアプリの登録から支払い方法（現金・カード）までの詳細なステップ
- カイロ国際空港やピラミッドエリアなど、特定の観光スポットでの具体的なウーバー活用術
エジプトでウーバー（Uber）は利用可能？
エジプト旅行の計画段階で、まず明確にしておくべきは「ウーバー（Uber）が主要な訪問先で機能するか」という点です。結論として、エジプトの主要大都市ではウーバーが非常に活発に利用されており、旅行者の移動インフラとして確立されています。
ウーバーが利用できるエジプトの主要都市
ウーバー（Uber）のサービスが最も普及しているのは、間違いなく首都カイロとその周辺地域（ギザを含む）です。カイロ市内中心部、イスラム地区（ハーン・アル＝ハリーリ市場など）、カイロ国際空港、そしてギザのピラミッドエリアまで、広範囲をカバーしています。アプリを開けば、常に多数のウーバー車両が地図上に表示されるでしょう。
次いで利用が盛んなのは、地中海に面したエジプト第2の都市アレクサンドリアです。アレクサンドリア図書館やカイトベイの要塞など、市内の主要スポット間の移動に問題なく利用できます。
また、紅海リゾートとして知られるハルガダ（フルガダ）や、シャルム・エル・シェイクの一部地域でもサービスが展開されています。ただし、これらのリゾートエリアではカイロほどの車両数は期待できない場合もあります。
重要な注意点として、ナイル川中上流域の主要観光都市であるルクソールやアスワンでは、2025年現在のところ、ウーバーのサービスは提供されていません。これらの都市では、流しのタクシーとの交渉や、ホテル経由でのチャーターが主な移動手段となります。
なぜエジプト旅行でウーバーが推奨されるのか
エジプトの交通事情において、ウーバー（Uber）が旅行者に強く推奨されるのには、明確な理由が存在します。それは、従来のタクシー利用時に発生しがちな「料金トラブル」と「安全性の懸念」を根本的に回避できる点にあります。
エジプトの一般的なタクシー（特に白タクシー）は、メーター制が義務付けられているにもかかわらず、実際にはメーターを使用しなかったり、「メーターが壊れている」と主張したりするケースが非常に多いのが実情です。結果として、乗車前に目的地を告げ、その都度料金交渉を行う必要が生じます。この交渉が旅行者にとっては大きな精神的負担となり、また法外な料金を請求される温床ともなっています。
一方、ウーバーはアプリ上で行き先を入力した時点で、料金が自動的に確定（または高精度な概算が提示）されます。運転手と直接金銭の交渉を行う必要は一切なく、降車時に提示された金額を支払うだけです。この「料金の透明性」こそが、ウーバー最大のメリットと言えます。
エジプトにおけるウーバーの普及状況と社会的影響
エジプト、特にカイロにおけるウーバーの普及は目覚ましいものがあります。2014年にサービスが開始されて以来、その利便性と透明性から、観光客だけでなくエジプト国民の日常の足としても急速に浸透しました。
ウーバーの登場は、エジプトの伝統的なタクシー業界に大きな衝撃を与え、サービスの質に関する競争を生み出しました。また、多くのエジプト人にとって新たな雇用機会（ギグワーク）を創出し、経済的な側面でも無視できない影響を与えています。旅行者は、比較的整備された清潔な車両（多くの場合、エアコンが完備されている）を利用できるという恩恵も受けています。
エジプトでのウーバー（Uber）利用方法と安全性
エジプトでウーバーを利用するプロセスは、他の国と基本的に同じです。しかし、安全性を確保し、スムーズに利用するためには、現地の事情に即したいくつかのポイントを押さえておく必要があります。
アプリの登録と必須な「ネット接続」
ウーバー（Uber）の利用には、当然ながらスマートフォンアプリとインターネット接続が不可欠です。日本国内で既にウーバーのアカウントを持っている場合、そのアカウントとアプリをエジプトでそのまま使用できます。渡航前に日本国内でアプリをダウンロードし、電話番号認証、そしてクレジットカード情報の登録を済ませておくことが強く推奨されます。
エジプト現地でウーバーを利用するためには、常時インターネットに接続できる環境が必要です。カイロ国際空港で旅行者向けのSIMカード（Vodafone, Orange, Etisalatなど）を購入し、データ通信プランを契約するのが最も確実な方法です。ホテルのWi-Fi環境下で配車をリクエストすることも可能ですが、乗車中や降車後の連絡を考慮すると、モバイルデータ通信があった方が圧倒的に安心です。
ウーバーの安全性は？タクシーとの比較
安全性は、エジプト旅行において最も優先すべき事項の一つです。ウーバー（Uber）は、従来のタクシーと比較して、安全性を高めるための複数のシステムを導入しています。
第一に、全ての乗車履歴がアプリ上に電子的に記録されます。運転手の名前、顔写真、評価（レーティング）、そして車両情報（車種・ナンバープレート）が配車確定時に利用者に通知されます。これにより、万が一のトラブル（忘れ物や事故など）が発生した際も、追跡と対処が容易です。
第二に、GPSによるリアルタイムのルート追跡機能です。乗車中は、アプリの地図上で現在地と目的地へのルートが常に表示され、意図的な遠回りを防ぐことができます。また、「セーフティ機能」として、緊急時に当局へ通報するボタンや、家族・友人に自分の現在地と乗車状況をリアルタイムで共有する機能も備わっています。
従来のタクシーでは、運転手の身元が不確かであることに加え、車両の整備不良（シートベルトが機能しない等）のリスクもありましたが、ウーバーは車両の登録基準を設けており、比較的安全な移動が期待できます。
支払い方法（クレジットカード vs 現金）
エジプトのウーバー（Uber）では、「クレジットカード決済」と「現金決済（エジプト・ポンド）」の両方が利用可能です。
旅行者にとっては、アプリに登録したクレジットカードでの自動決済が圧倒的に推奨されます。降車時に現金のやり取りが一切発生しないため、小銭やお釣りの心配をする必要がなく、非常にスムーズです。
現金決済を選択することも可能ですが、いくつかの注意点があります。運転手が高額紙幣で支払った際に「お釣りがない」と主張するケースが報告されています。現金払いを選択する場合は、必ず細かい紙幣（5ポンド、10ポンド、20ポンド札など）を十分に用意しておく必要があります。
エジプトの特定シーン別ウーバー活用術
ウーバー（Uber）の基本的な使い方がわかったところで、次はエジプト旅行の具体的なシーンでの活用術と注意点を解説します。
カイロ国際空港（CAI）でのピックアップ
エジプト到着後、最初の移動となるカイロ国際空港から市内ホテルへのアクセスは、ウーバーが非常に有効です。空港の公式タクシーもありますが、料金交渉が必要な場合があります。
ウーバーを利用する場合、まず空港の無料Wi-Fiに接続するか、到着ロビーで購入したSIMカードを（通信・通話が）使える状態に設定します（アクティベート）。アプリを開き、ピックアップ場所を指定します。カイロ国際空港は複数のターミナル（T1, T2, T3）に分かれており、それぞれにウーバーの指定ピックアップゾーン（駐車場や特定の車寄せ）が設けられていることが多いです。アプリの指示に従い、指定された場所で待機します。
この際、運転手から現在地確認のために電話がかかってくることがありますが、アラビア語のみの場合も多いため、アプリ内のチャット機能（自動翻訳付き）を利用するか、「I am at the designated Uber pickup zone.」と伝える準備をしておくと良いでしょう。
ギザのピラミッドエリアでの利用
ギザの三大ピラミッドやスフィンクス観光でもウーバーは活躍します。カイロ市内からピラミッドエリアへの往復利用が一般的です。
注意点として、ピラミッドエリアの「入口（チケット売り場）」は複数存在します。運転手に「メインエントランス（スフィンクス側）」または「ピラミッド側（クフ王）」のどちらに向かうかを明確に伝えるとスムーズです。
観光後、ピラミッドエリアからウーバーを呼ぶ際も、ピックアップ場所を正確に指定する必要があります。広大なエリアのため、自分が今いる出口（例：スフィンクス側の出口、KFCの近くなど）をアプリのピンで正確に指定することが重要です。このエリアは客待ちのタクシー運転手や客引きも多いため、配車したウーバーのナンバーをしっかり確認してから乗車してください。
深夜・早朝の利用と注意点
カイロ市内では24時間ウーバーが稼働しており、深夜や早朝の移動（例：早朝の空港移動）にも利用できます。
ただし、深夜帯は運転手の数が日中よりも少なくなるため、配車にかかる時間が通常より長くなる傾向があります。また、安全のため、深夜に一人で利用する際は、乗車前に必ず車両ナンバーと運転手情報を確認し、可能であれば前述の「乗車状況の共有」機能を活用することをおすすめします。特に女性一人の場合は、後部座席に乗車するなど、基本的な安全対策を心がけることが賢明です。
ウーバー以外の選択肢は？エジプトの配車アプリ事情
エジプトの配車アプリ市場は、ウーバー（Uber）の独壇場ではありません。ウーバーと並び、あるいはそれ以上に強力なシェアを持つ競合アプリが存在します。
エジプトで人気の「Careem（カリーム）」とは？
エジプトおよび中東・北アフリカ地域で絶大な人気を誇るのが「Careem（カリーム）」という配車アプリです。ドバイを拠点とするCareemは、ウーバーと同様のサービスを提供しており、エジプト国内でも広く普及しています。
興味深いことに、Careemは2019年にウーバー（Uber）によって買収されています。しかし、買収後もCareemのブランドとアプリは独立して運営され続けており、現在もウーバーの最大のライバルとして、また旅行者にとっての強力な第二の選択肢として存在し続けています。
Careemとウーバーの徹底比較
Careemとウーバー（Uber）の基本的な機能、利便性、安全性に大きな差はありません。どちらもアプリによる配車、事前料金提示、GPS追跡、カード決済、現金決済に対応しています。
料金については、時間帯や需要によって変動しますが、両アプリで料金を比較すると、Careemの方がわずかに安いケースがあるとも言われています。また、Careemは「GoAwl」と呼ばれる三輪タクシー（トゥクトゥク）の配車サービスや、「Go（エコノミー）」といった廉価な車種オプションをウーバーに先駆けて導入するなど、よりローカライズされたサービスを展開している点が特徴です。
エジプト旅行の際は、ウーバーとCareemの両方のアプリをスマートフォンにインストールし、配車をリクエストする都度、両方の料金や待ち時間を確認して、より条件の良い方を選ぶのが最も賢明な方法と言えるでしょう。
従来のタクシー（白・黒・黄）との料金・利便性比較
エジプト、特にカイロには複数の種類のタクシーが存在します。最も多いのが「白タクシー」で、メーターが搭載されていますが、前述の通り使用されないことが多いのが現状です。さらに古いタイプの「黒タクシー」はメーター自体がなく、完全交渉制です。
比較的新しい「黄タクシー（イエローキャブ）」は、無線予約制で料金は高めですが、エアコン完備でメーターも確実に使用されるため、信頼性は高いです。
これらの従来のタクシーと比較した場合、ウーバー（Uber）やCareemの利便性は圧倒的です。料金は交渉制の白タクシーより安くなることが多く、イエローキャブよりは確実に安価です。なにより、アプリで行き先を指定するだけでよく、アラビア語が話せなくても目的地まで確実に移動できる利便性は、何物にも代えがたいメリットです。
まとめ：エジプトでのウーバー利用完全ガイド
エジプトでのウーバー（Uber）利用に関する情報を、詳細なポイントを含めてまとめます。
- エジプトの首都カイロ、ギザ、アレクサンドリアではウーバーが広く普及しています。
- ハルガダなどのリゾート地でも利用可能ですが、カイロほどの車両数はありません。
- 重要：ルクソールやアスワンでは、ウーバーのサービスは提供されていません。
- エジプト旅行において、ウーバーは料金トラブルを避けるために最も推奨される移動手段です。
- 最大のメリットは、料金が事前に確定し、面倒な料金交渉が一切不要である点です。
- アプリで行き先を指定するため、言語の壁（アラビア語）によるトラブルを回避できます。
- GPSによるルート追跡、運転手情報の事前確認、緊急通報機能など、安全性が高いです。
- 日本で使用しているウーバーアカウントとアプリが、エジプトでそのまま利用可能です。
- 利用には常時インターネット接続が必要なため、現地のSIMカード購入が推奨されます。
- 渡航前にアプリをインストールし、クレジットカード情報を登録しておくとスムーズです。
- 支払い方法は、登録済みのクレジットカード自動決済が最もトラブルがなく推奨されます。
- 現金（エジプト・ポンド）での支払いも可能ですが、お釣りの問題に備え細かい紙幣の用意が必要です。
- カイロ国際空港では、指定されたウーバーピックアップゾーンから乗車します。
- ピラミッドエリアでは、広大な敷地のため、ピックアップ場所のピン指定を正確に行う必要があります。
- 深夜や早朝も利用可能ですが、日中より待ち時間が長くなる傾向があります。
- エジプトには「Careem（カリーム）」という、ウーバーの強力な競合アプリが存在します。
- Careemはウーバー傘下ですが独立運営されており、機能や料金はウーバーと同等か、時に安価です。
- 旅行者は、ウーバーとCareemの両方のアプリを準備し、都度比較するのが最適です。
- 従来の白タクシーや黒タクシーと比較し、ウーバーは料金、安全性、快適性、利便性の全てで優れています。
- 乗車前には、必ずアプリに表示された車両ナンバーと運転手の顔写真が、実物と一致するか確認してください。
エジプトの交通事情は、ウーバー（Uber）やCareemといった配車アプリの登場によって劇的に改善されました。これらのツールを利用することで、移動のストレスを最小限にできます。
テクノロジーの力を借りて、安全で快適なエジプトの旅を満喫してください。
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