古代エジプト文明の謎を追い続ける考古学者・吉村作治氏。エジプトの灼熱の砂漠から数々の貴重な発見をもたらした彼の情熱は、年齢や病を超えて今なお衰えることがありません。本記事では、吉村氏のエジプト考古学への貢献と、彼が乗り越えてきた健康上の困難について探ります。
エジプト考古学界の巨匠としての吉村作治
エジプト発掘の第一人者
1943年東京生まれの吉村作治氏は、早稲田大学時代の1966年、わずか23歳でエジプトの地を踏み、以来半世紀以上にわたってエジプト考古学の最前線で活躍してきました。アジア人として初めてエジプトでの発掘権を取得し、マルカタ南遺跡の彩色階段やツタンカーメン王の銘が刻まれた指輪などを発掘。テレビなどのメディアでも精力的に古代エジプトの魅力を伝えてきました。
数々の功績と挑戦
吉村氏は、ダハシュール北遺跡での貴族墓の発見、2003年のピラミッドのプロトタイプと考えられる大型石造建造物の発見など、数多くの成果を挙げています。現在も「ギザのピラミッドは墓ではない」という独自の仮説を立て、GPR(電磁波探査レーダー)を駆使した調査を進めています。批判に対しても「証明してやろうじゃないか」という姿勢で、80歳を超えた今も情熱を失わずにいます。
教育者としての側面
吉村氏は考古学者としてだけでなく、教育者としての一面も持ち合わせています。早稲田大学を退職後も、東日本国際大学の学長として若い世代の育成に尽力。また、「吉村作治のエジプトピア」と名付けられたウェブサイトでは、古代エジプトの魅力や研究成果を広く発信し続けています。
調査資金の獲得と挑戦
エジプトでの発掘調査には莫大な資金が必要です。吉村氏は「エジプトの研究をするためには、お金がかかる」と語り、自ら資金集めに奔走。その総額は110億円にのぼるとも言われています。81歳を迎えた2024年には「吉村作治エジプト調査隊、存続の危機!」と題したクラウドファンディングを実施し、ピラミッドの謎解明に向けた資金確保に励んでいます。
エジプトでの吉村氏が経験した病気と健康問題
複雑骨折と車椅子生活
吉村氏は10年前、ギザのピラミッドの南側で見つけた「第2の太陽の船」の発掘調査中に4メートルの高さから転落し、左膝を複雑骨折するという大怪我を負いました。この事故により人工関節を入れることになり、5年間の車椅子生活を余儀なくされました。しかし「死ぬ時に車イスだとあの世でも車イスになる」という言葉を聞き、リハビリに励んだといいます。
前立腺がんとの闘い
吉村氏は前立腺がんも患っていたことが明らかになっています。発症時期は2013年頃とされており、左膝の複雑骨折の治療と重なる形でがん治療も行っていました。しかし、現在はがんを克服したと報じられています。
転倒事故と再びのリハビリ
2024年11月には、横浜市で行われたイベントに車椅子姿で登場した吉村氏。回復傾向にあったものの前年の冬に再度転倒してしまい、「針とマッサージとRIZAP」でリハビリ中であることを明かしました。「車いすじゃなくて、すたすた歩きたい」という思いで懸命にリハビリに取り組む姿勢が報じられています。
健康状態に関する憶測
吉村氏の呂律が回らない様子がテレビなどで見られたことから、脳梗塞やパーキンソン病を患っているのではないかという憶測も広がりました。しかし、これらの疾患に関する公式な発表はなく、あくまでも噂の域を出ません。目の焦点が合っていない様子も見られるものの、具体的な健康状態についての詳細は明らかにされていません。
エジプト発掘に潜む病気リスクと吉村氏の対策
エジプトの気候と健康への影響
エジプトは国土の94%が砂漠に覆われた乾燥熱帯地域で、特に夏季は高温になります。2月下旬から5月上旬にかけては「ハムシーン」と呼ばれる砂嵐がしばしば発生し、アレルギー疾患や呼吸器疾患のリスクが高まります。また、夏季には脱水症や胃腸炎のリスクも増加します。発掘調査に長年携わる研究者にとって、これらの気候条件は慢性的な健康問題につながる可能性があります。
現地の感染症リスク
エジプトはいくつかの感染症が流行している地域でもあります。狂犬病の流行地であり、ビルハルツ住血吸虫症やアメーバ赤痢、ジアルジア症などの寄生虫疾患も報告されています。特にナイル川などの淡水域は住血吸虫が生息しており、そこで泳いだり手足をつけたりすることでリスクが高まります。長期滞在者にとっては、これらの感染症への継続的な注意が必要です。
医療環境と対策
エジプトの医療環境は都市部では比較的整っていますが、日本と同等のサービスを受けることは難しい状況です。カイロやアレキサンドリアの一部私立病院では高度な医療も提供されていますが、救急や集中治療の対応には限界があります。長期間エジプトで調査を行う研究者にとって、健康管理と緊急時の対応策を事前に整えておくことが重要です。
予防と対策の重要性
エジプトで長期の調査を行う場合、事前のワクチン接種や予防薬の準備、充分な水分補給、食品衛生への注意、虫刺され対策など、様々な健康管理が求められます。吉村氏のように長期にわたって調査を続ける場合、これらの健康リスクへの対応が研究活動の継続に直結します。
まとめ
エジプト考古学の第一人者として半世紀以上にわたり活躍してきた吉村作治氏。その情熱と業績は、日本のエジプト研究の礎となっています。複雑骨折や前立腺がんなど様々な健康上の困難と闘いながらも、81歳となった今もなお「ピラミッドの謎解明」という夢を追い続ける姿勢は、多くの人々に勇気と感動を与えています。
エジプトの灼熱の砂漠から様々な発見をもたらし続ける吉村氏の姿から、私たちは年齢や健康状態に関わらず、情熱を持って挑戦し続けることの価値を学ぶことができるでしょう。彼の「証明してやろうじゃないか」という不屈の精神は、考古学の分野にとどまらず、あらゆる挑戦者にとっての指標となるものです。
- 吉村作治氏は1943年東京生まれのエジプト考古学者
- 1966年に初めてエジプトを訪れて以来、半世紀以上にわたって発掘調査を継続
- マルカタ南遺跡の彩色階段やツタンカーメン王の指輪などの重要な発見
- ダハシュール北遺跡での貴族墓の発見など数々の成果
- 現在は「ギザのピラミッドは墓ではない」という独自の仮説を検証中
- 発掘資金として総額110億円を調達したと言われる
- 81歳となった現在もクラウドファンディングで資金を募り調査を継続
- 10年前に発掘中の4メートルの高さから転落し左膝を複雑骨折
- 複雑骨折により人工関節を入れ5年間の車椅子生活を経験
- 2013年頃に前立腺がんを発症するも克服
- リハビリを通じて歩行訓練に取り組むも再度転倒し現在もリハビリ中
- エジプトの乾燥した気候や砂嵐「ハムシーン」による健康リスク
- ナイル川流域の住血吸虫症など感染症のリスク
- エジプトの医療環境は都市部では比較的整っているが日本と同等ではない
- 長期調査には充分な健康管理と対策が不可欠
- 年齢や病を超えて情熱を持ち続ける姿勢が多くの人に感動を与えている
- 「証明してやろうじゃないか」という不屈の精神が研究の原動力に
- 81歳でもエジプトとの往復を続け研究への情熱を失わない
- 吉村氏の健康問題について様々な憶測があるが公式発表は限られている
- 健康上の苦難を乗り越えながらも研究を継続する強い意志が注目される
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